どうしようもなく暇な時。
そして、話し相手も一応いる時。
でも、話す内容が特に見つからない時。

管弦楽部員なら、管弦しりとりはいかがですか?





- Scherzando -





「管弦しりとりやろーぜ」

そう最初に言ったのは若菜。
それに乗ったのはその場にちょうど居た木管s&藤代。

「あ、でも先輩は参加禁止な」
「何よそれ」
「強すぎて勝負になんない」
「はいはい、じゃあ私は助っ人で。1回使うごとにペナルティね」

かくして、管弦しりとりは幕を開ける。


「最初は?」
「オーケストラの『ラ』からな。『ラッパ』。次藤代」
「『パ』? ぱ、ぱ!? 先輩教えて下さい!」

ちょっとこれは速すぎませんかね。

「自分で考えたら?」
「ムリっす!」
「まったく・・・『パストラーレ』。じゃ、
「『レ』? 性格悪いね、・・・。じゃあ、『レントより遅く』。笠井」
「なら、『クロード・ドビュッシー』で・・・誠二」
「げ、また!? し、し・・・『ショスタコーヴィッチ』! タク!」
「ちょっと待って、これって順番じゃないの?」

が至極まともな質問をする。

「嵌めたい人を嵌めれば良いんじゃない?」
、本当に性格悪いわよ・・・」

で、そのまま笠井へ。

「『チャイコフスキー』。先輩」
「『きらきら星変奏曲』。じゃあ、若菜」
「ええー・・・じゃ、『くるみ割り人形』! 『ウ』で、先輩」
「何で私ばっかりなの! 『ウィーンフィル』 はい、藤代!」
「え、『ル』? そんなのあるんすか!? 先輩〜!」
「ちゃんとあるから、自分で考えなさい」
「ひどい!」

『ル』なんて普通のしりとりでも難しいのにね。

「る、るー?」
「藤代ー、もうすぐ時間切れだぜ」
「なんだよそれ!」

ルールその1:さっさと答えないと失格。因みに基準は周りの人が言い出すまで。

せんぱーい・・・」
「うっさいなー。『ルイ・ブラス』。若菜」
「『ストラヴィンスキー』で、藤代!」
「うお、また来た! き・・・き、『金管楽器』!タク!」
「また? 『き』ってあんまり無いんだけど・・・『キャロル』 誠二」

管弦しりとりの理:陥れる時は『ル』か『キ』で攻めるべし。

「また『ル』! もうないって!」
「藤代、まだあるよ」
「何で先輩はそんなの思いつくんすか!?」

音楽経験の差?

「私ももう『ル』は思いつかないなー。よく考えるね、
「そのくらいじゃなきゃ助っ人の意味ないでしょう?」

で、藤代。

「・・・先輩」
「『ルバート』。藤代、いい加減答えないと負けるよ?」
「『ト』!? あ、『トランペット』!」
「それ思いつかなかったらどうしようかと思ったわ」
「じゃ、次は若菜だな!」

「ト」も難しいんだな、意外と。

「『トロンボーン』・・・は待った、ダメで!」
「若菜、今何て言った?」

ちゃんも性格悪いよ。

「だからー、あー・・・あ、『トライアングル』。『ル』ってことは藤代だな」
「・・・マジで?」
「いい加減藤代も観念しなさい」
先輩まで!? 先輩、『ル』って何が!?」
「もう自分で考えてよ・・・。時間かかるんだもん」

でもさすがに、『ル』はネタ切れ。

「俺が考えた方が時間がかかるんです!」
「じゃ、終わりにすれば?」
「何も言わないで終わりっすか!?」

多分それはプライドが許さないだろうけど。

「んーじゃあね、ヒントを上げるよ。超!有名な作曲家」
「『モーツァルト』。」
「若菜、あんた馬鹿でしょ」

が冷たく言い放つ。

「何で『ル』って言われてるのにモーツァルトなのよ!」
「でも、『ル』で始まる作曲家っていましたっけ・・・『ルーセル』・・・『ルービンシュタイン』はピアニストだし・・・『アンダーソン』は有名だけど・・・」
「笠井君は藤代と違ってちゃんと考えるから偉いよね」
先輩、俺だって考えてます!」
「ならさっさと答えなさい」

『ル』で始まる超有名作曲家。因みに、苗字は『ル』から始まりません。

「まあ、モーツァルトくらい有名だよ」
「それって、『バッハ』、『ヘンデル』、『ハイドン』・・・・・あ」
「あー、笠井君はわかったね」
「何、タク教えて!」
「って言うか先輩、これって・・・」
「いいの、時間切れ」
「なーにっ!?」

笠井が一つ溜息をつく。

「誠二、『ルートヴィヒ』・・・?」
「ん? ・・・・あ、そっか! 『ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン』! 『ル』在った!」
「はい、藤代くん残念でしたー。おしまい」
「え・・・・? あ!!」
「あー、これ時間かかるんだよねー」
「藤代に何してもらう?」

管弦しりとり。
管弦部員の、極上の暇つぶし。



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++あとがき++
藤代を嵌めよう計画。
暇つぶしの王道、管弦しりとり。美術の授業中でもやってたりします。
カタカナが多くなるのは必然ですね。
「ン」が多くて悩む。
ピンクの部分にカーソル当てると、用語説明出ます。

2006/07/09