ひとつふたつ。
好きなもの数えて。
嫌いなもの除いて。

嫌いなものなんてなかった。

だから、どうしよう。

何をすればいい?





Lacrimosa.19





風邪を引いた。
私ではなく、が。
たぶん風邪なんだと思う。
この時期、そういう人は多い。



「熱出ちゃえば治りそうなのにねぇ」

37.5℃。
それ以上、体温計の数字は上がらない。
かと言って下がるわけでもない。

「ん・・・、薬・・・頭痛い」
「薬禁止」

わずかな歪みも三日続けば、相応の負荷となって体にのしかかる。
確かに今の状態は辛くて苦しいだろう。

それでも、駄目だ。
薬以外の対策を考えなければ。


「鎮痛剤は大抵解熱作用があるんだから」


だからこそ渡してあげたいという気持ちもある。
でも、ここで熱を下げて頭痛を取り除いた所で、治るわけではない。

・・・」
「可哀想だけどだめー」

席を立って、水と錠剤を持ってくる。

「何か食べる?」

たぶんいらないだろうなと思いつつ、聞いてみる。
思ったとおり、僅かに首を横に振っては答えた。

何も食べないで平気なのだろうか。
そう考える事ができるのは、私自身が健康だからなのだろう。


「何か食べないと、いいかげん治るものも治らないよ」
「でも・・・」

口ごもるに、グラスに入った水を渡す。
これだけしか今は受け付けてくれない。

「水っていうのはノンカロリーノンミネラルなんだからね」
「ミネラルウォーターだけど・・・」
「あんたの体じゃ何の栄養にもならないの」

は小さく笑って、水を一口だけ含んだ。
笑って喋れる。
だから相当な重症、というわけではない。


、『病は気から』って知ってる?」
「それくらいは・・・」

じゃあ気合で治しなさい、と言うとやっぱりは微笑んだ。
塞ぎこんで寝ているよりはマシかもしれない。


、錠剤は呑める?」
「ううん・・・わかんない」

食事代わりに栄養剤。
本当はこんなことしない方がいいのだけど。
サプリメントに頼った途端、食欲は更に減退するものだから。
最も、今のに減退するほどの食欲はなさそうだけど。

「自分で持ってきて言うのもアレだけど、錠剤も無理そうだね・・・」

何しろ、固形物はおろか、お茶も飲んでくれない状態なのだ。
水だってそう。
風邪の体にはただの水より、スポーツドリンクのようなものの方が良いだろう。
でも、それを飲ませたら気持ちが悪くなったとかで、それ以来やっぱり飲んでくれない。

打つ手なし。



「しょうがない、渋沢に連絡取るかー」
「・・・何で?」
が治らないからに決まってるでしょ!」

彼の方が、と一緒に居た時間は長い。
ここまで酷いのは入学以来初めてだし、聞いてみた方が絶対に良いだろう。
「いつものこと」で済ませていたけれど校医に見せることになるかもしれないし、ちゃんと病院に行くべきかもしれない。

とにかく、彼の方がわかるはず。
それが少し悔しいけれど。

鞄の中から携帯電話を取り出して、メモリを探した。



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++あとがき++
風邪は性質悪いんだよな・・・。
特効薬もないし。
本当に気合で治すしかないんじゃないでしょうか。
風邪薬って症状抑えるだけだし。
取り敢えず食べて寝るのが一番いいみたいだけど。