あの表情が。
どうして屋上に。
考えても、考えても解らない。

彼女―― のことが忘れられない。





Lacrimosa.2





結局、大した話もしないまま授業終了の10分前になり、は帰っていった。
人が来るといけないからと言って。


・・・・屋上は立ち入り禁止なのに。


人が来るはずはない。
それが女子棟なら、尚更。
規則を破って鍵のかかっている屋上に来る者など、ほとんど居ないだろう。


・・・・しかも寒いし。


ごろりと横になって空を見上げる。
最近は冬晴れが続いていたが、今日は雲が立ちこめている。
灰色一色の空は、心なしか屋上に来た時よりも色が濃くなっているような気がした。

太陽はない。
月も、星もあるはずがない。
鳥も虫も、この寒空では飛ばない。

屋上から見上げた空は、暗い雲ばかり。
他には何も見えない。
何も存在しない。


・・・・見るものなんて。


何もないというのに。



ならば彼女は、いったい何を見ていたのだろう。
何の目的が有って、ここにいたのだろう。

まさか、こんな空を見るためとは思えない。


・・・・あんなに真剣な目で。




遠くでチャイムの音がする。
下の方からざわめきが聞こえてくる。


授業が終わったらしい。


重い腰を上げて立ち上がる。
次の授業くらいは出ないと。

考えながら、屋上を出る。



は生徒会か何かやっていたはずだ。
もしかしたら、渋沢あたりは何回か会っているかもしれない。


・・・・なら、渋沢に聞くか。


が、どんなやつか、と。



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++あとがき++
ていうか思ったんだけど、何で冬から話が始まってんだろう。
卒業とか挟まないといけないじゃん。
それは困ったなぁ・・・。
つじつまあわせを考えられない。

2006/05/01