・・・?」

聞いた相手は、振り向きざまに怪訝そうな顔をして聞き返した。

「知ってるのか?」
「知ってるもなにも・・・」





Lacrimosa.3





聞いた相手――即ち渋沢は、いったん言葉を切って続ける。


「幼馴染み、だ」


・・・・・・・・・・・・



「はぁ?」

予想もつかなかった返答に、驚きの声が隠せない。思わず気の抜けた返答をしてしまった。
きっと今、これまでに無いほど間抜けな表情をしているに違いない。

あまりにも驚いている三上を心配したのか、渋沢がもう一度言い直す。


「いや、だからは幼馴染みなんだ」

真面目な彼の口から出る、『』と言う呼び名。それが、二人は間違いなく知り合いであると言っている。


「・・・初めて聞いたぜ」
「そりゃ、言う必要が無かったからな」

教科書を片付けながら、当たり前のように渋沢は答える。


「それで? がどうしたんだ?」

逆に問い掛けられて、ようやく混乱していた頭は元に戻った。


「屋上で何やってるんだ、お前の幼馴染みは」

渋沢が驚いたように目を見開く。

「屋上に・・・居たのか?」

屋上にいて欲しくないとでも言いたげな言い方。

「屋上に何かあんのか?」
「いや、なんでもない・・・。三上、また授業サボったのか」
「わりぃかよ」

無理矢理話を逸らされた感じが否めない。
渋沢の口調も歯切れが悪い。

――何か隠したいことでもあるのだろうか。



「で、は」
は・・・」

もう一度詰め寄る。
あの泣きそうな顔が、真剣な瞳が頭を掠める。


「三上、にはあまり興味本位で近づいて欲しくない」

彼女を傷つけたくないんだ、と。
確かにそう言って渋沢は教室を去った。



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++あとがき++
ヒロイン出てこない!
幼馴染み設定を凄く迷いました。そもそも、幼馴染みと言う設定を作って良いものか、と。
何にでも使えちゃうからなぁ・・・。苦し紛れ感が否めない。
相手も悩みました。渋沢か笠井か。笠井の方が、幼馴染みって言わなさそうだし。
それでも渋沢にしたのは、同学年の方が色々動かしやすいからです!(嫌な作者)
ヒロインの学年を1つ下げても良かったんだけど・・・。気付いたの第2話上げてからだったんだもん。

2006/05/03