心当たりがあった。 治らない理由と。 だって嫌だったから。 何か変だった? 間違っていた? わからないよ。 Lacrimosa.21 「暑いー。ー、エアコン!」 「はいはい。って言うかは何もしてないでしょうが。私は部活帰りだからわかるけど」 「生徒会行ってたもーん」 ああ、そうだったっけ、と頷く。 今年も副会長。来年はほぼ確実に会長推薦が来るだろう。 「もう! 誰よ勝手に生徒会に入れた奴・・・もうやらないってあんなに宣言しておいたのに」 「いいじゃない。、帰宅部でしょ。こういうのやってないと本当に何もしてないんだから」 「忙しさが中等部の比じゃないんですけど」 中高一貫であるから各機関は一応独立しているものの、基本的に高校側の機関は中学側の機関も包括する。 それは当然ながら生徒会も同じ。故に、高校生徒会はこの学園全体を取り仕切ることになる。 もちろん、忙しさは中学側と比べものにならない。 「夏暑い・・・副会長嫌・・・会長仕事やれよ・・・」 「生徒会室は冷房があったはずだけど」 「だって先輩が『冷房は28℃設定です』って上げてくれないんだもん・・・こっちは各部活や団体やら文実に確認とか連絡で歩き回ってるんだよ?」 ならきっと、はその先輩に嫌われてるのだろう。 は嫌われるか好かれるかどちらかしかない。そして半分以上の女子には嫌われる。 「ああ、休みなんだから休みたい、暑い」 「一応冷房入ってるけど。しかも私はさっきまでの練習中窓閉めきって効かない冷房の下で練習してたんだけど」 「私は文明の利器をフル活用しなきゃ生きていけない文明人なの!」 つまりは退化の一途を辿っているのだと、口には出さなかった。言ったとしても何の意味もないことを、は知っている。 がこれくらいのことで素直にうなずくわけがない。 だいたい、頭が良いだけあっては口が達者だ。が言い返したところで、更に何か言われて言い包められ、有耶無耶に終わるに決まっている。 言ってることは、こっちの方が多分正しいのに。 「涼しい・・・時代の発展に感謝」 「その前にその長袖をどうにかしなさい」 連日真夏日を記録しているというのに、いつでも長袖。 それで文明に頼るのだからおこがましい。 「だってー」 「せめて私服の時は黒を着ないとか、制服の時もセーターは脱ぐとかあるでしょう!」 見ているこっちが暑くなるような格好でいることも多いのだ。 自身は特別暑がりというわけではないから、涼しい顔をしていることも多いけれど。でもやはり、長袖を着ていれば人並み以上に暑いことに変わりはない。 「体育の時間まで・・・」 「そりゃもちろんジャージ着用だよ?」 「同じクラスなんだけど」 みんなTシャツ姿になるのだから、一人だけどうしても目立つ。 誰も突っ込まないのが不思議だが、だから何故か自然に納得されているのだろう。 「渋沢は何も言わないわけ?」 「もう諦められた」 笑顔で言われてしまうと、もう口を挟む余地もない。 「・・・・まあいいけど」 「そうそう、気にしないの!」 気にならないはずないじゃない。 そう言えるはずもなく。 何で長袖なのか知ってしまっているから。 半袖どころか七分袖だって着ないのは何故なのか、知っているから。 それなのに気にしないなんて出来ない。 そうやって隠しているのを見るたびに。 言いようもなく胸が痛む。 いつ治るの? 治せるの? まだ隠すの? 出せないの? 何でやるの? 教えてくれないの? ねえ、わからない。 あなたの為と思ったのに。 私、何を間違えたのかな。 わからないよ。 Back Top Next ++あとがき++ 長袖黒は、見てるほうが暑い。 せめて七分丈にならないものかな・・・。 2006/08/27 |