昼休み。
廊下が煩くなる。

教室までもがざわめく。
全員の視線の先にいるのは、


・・・・・・彼女。





Lacrimosa.4





基本的に女子禁制の男子棟。
そこに女子生徒がいるなら、男子生徒の注目の的となることは確実だ。
それに例外は殆どない。例え、誰であろうと。


それだから、その女子生徒が であるということは騒ぎを更に大きくしていた。


当の本人、は何食わぬ顔で廊下を歩いている。
手には大量の紙の束。
周りの視線も、好奇の目も、何も感じている様子はない。

彼女はそのまままっすぐに3年の廊下まで進み、1つの教室の前で止まった。


クラスを確認するように顔を上に向ける。
紙の束を左手に持ち直して、は後ろのドアをノックした。


「すみません、失礼しまーす」

ガラリとドアを開け、声を上げる。
ここでは聞きなれない少女の声に、教室中の音が止んだ。

その異様さにさすがにも戸惑ったが、それも一瞬の事。


「あれ、なんだここのクラスだったんだ。そういえばそうだった」

渋沢の姿を認め、彼女は当たり前のように教室に入ってきた。


「あれ、三上君もいる」
「よぉ」
「先日は大変お世話になりました」

冗談ぽく微笑んで、渋沢の方に向き直る。


「それでね、会長さん・・・じゃなくて元生徒会長さんに用事あったんだけど・・・・いっか。2年のクラス行きたいんだけど・・・。引継ぎ終わってない分あったから」

彼女の用件を聞いて、教室内にざわめきが戻った。


大抵の仕事は12月が終わると同時に下の学年に引き継がれるが、生徒会とクラブ会計などは話が別。
年度替りまで前の学年がやらなくてはいけない仕事があり、3ヶ月間2つの学年が動いている。
その残りの仕事の中で一部終わったものを、引き継ごうとしたのだろう。


「2年?」
「そう。次期生徒会長サマと会長補佐サマ。そういや副会長の笠井君てサッカー部だったね」

前の会長みたいな人が次の会長だったら、彼も大変だろうね。

屋上で見たのと変わらない、ふわふわした笑顔で彼女は言った。


「今年はがかなりこなしていたからな」
「そうそう、副会長の忙しさは会長によって決まるのです」

で、案内してくれるかな。

「・・・ああ、わかった」

渋沢がの紙束を受け取って、ふと動作を止めた。


「・・・・そういえば、屋上に」
「ん? ああ、三上君に聞いたんだね」

少し困ったような笑顔でこっちを見る。

「心配してくれるのは嬉しいけど、意味ないよ」

大丈夫。今は、


――死のうなんて思ってないから


教室はうるさかったはずなのに、それだけは耳に響いた。



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++あとがき++
三上視点が続きますー。
次に彼らは出てくるか・・・?とか期待しないで下さい・・・。
人が増えれば増えるほど、書くのが苦しくなっていく。
さーて、続きどうしよっかな。

2006/05/07