死のうなんて思っていないと
彼女は笑顔でそう言った。

死のうなんて思っていない。
今は。
今は・・・。

じゃあ、前は。


あの時は・・・・・・?





Lacrimosa.5





空は綺麗に晴れている。
気温もこの季節にしてはやや高めだ。
少しずつ暖かい日が増えてきている。

授業に出る気分にはならない。
どうせ次は数学だ。あの教師とは相性が悪い。
教室にいても何があるとは思えない。
今日1回休んだところで、授業に遅れが出る筈もない。
テストの点数に響く訳がない。

――そんなに頭の作りは悪くないんでね。

そして出席日数も一応足りている。出なければならない理由はない。

三上は屋上へと向かった。




日が当たっている所は十分すぎるほどに暖かい。
だから日当たりの良い屋上に来る生徒がいてもおかしくはない。
おかしくない、とは思う。

しかし。


「・・・・何でいるんだ?」
「あ、三上君。今日もサボりですか」

そうじゃなくて。

「何でお前がここにいるんだ?」
「良いじゃない。屋上はみんなのもの」

そういうことでもなくて

「ここは、男子棟だろ・・・」



扉を開けた瞬間、目に飛び込んできた少女。
一番日当たりの良い場所で、太陽の眩しさに目を細めて。
壁にもたれていた少女。


「どうしてがここにいるんだよ・・・」
「だって女子棟の屋上は日当たりが悪いんだもの」

彼女が指差した方を見れば、確かにそこは屋上のタンクによって日が遮られている。

「前の授業中に来たから、多分人には見られてないよ」
「そんなにサボってんのかよ・・・」
「だって授業は出ても出なくても点数に影響しないし」

優等生が聞いて呆れる。
おまけに、ほど勉強が出来てしまうと、その言葉も嫌味にすらならない。

「授業出ないと成績には関係するだろ」
「それがですねぇ、それを補えるほどさんの点数は良いんですねぇ。それに出席日数も計算してあるし。サボりじゃなくて病弱で寮に戻って休んでるってことにしてあるし」
「なんて奴」
「何とでもおっしゃい」

変な奴。
この前会ったばかりで、まだそんなに回数も無いというのに。
噂や予想とは大違いの人間だ。


「んー、良い天気。こんな日に授業受ける気分にはならないじゃない。三上君こそ、授業出ないと危ないんじゃないの?」
「俺は大丈夫なんだよ」
「たいした自信ね」

が笑う。
本当によく笑う。

「そういや・・・」
「何?」
「お前、渋沢と幼なじみなんだって?」
「・・・何だ、知ってたの」

あ、でもそっか、言ってないだけで隠してないんだ、関係聞かれたら普通に答えるよね、かっちゃんだし。
意外そうに言った後、自分で何かつぶやいて納得したようだ。

「おい、お前・・・」

が時計をちらと見る。

「おっと、タイムリミット。私に聞きたいことがあるなら、また今度ね」

授業終了までまだかなりの時間があるのに。

「まだ時間はあるだろ」
「だーめ。笠井君捕まえなきゃ。どうせ君達の部はまた昼練あるんでしょ?」

だからチャイム鳴ったと同時くらいに教室乗り込まなきゃいけないし、何より教室探さなきゃ。
私、方向音痴なんだよね。だから早めに行動するの。

そう言って彼女は立ち上がろうとした。
立ち上がったのだが、すぐに青い顔をしてその場に崩れ落ちた。

「っ・・・おい・・・・」
「・・・ちょっと立ち眩んだ・・・。よし、復活!」

今度こそ立ち上がって、扉に向かう。

・・・本当に大丈夫かよ。

何となく一人に出来なくて、彼女の後についていった。



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++あとがき++
笠井くん出そうかなーどうしよっかなーと考え中。
いまいち性格がつかめない。
ところで、部長って生徒会は入れるんですか?ちなみに私の学校はダメです!
だから会長じゃなくて副会長にしてみたんだよ。渋沢も生徒会には入ってないよ。私の頭の中では。

2006/05/14