珍しく、学校終わってからすぐ寮に直行した。
すでに同室のは帰ってきていて、必死に机に向かっている。

・・・・そっか。

学年末テスト直前。
もうそんな日だったんだ。





Lacrimosa.7





「ただいま・・・」

の邪魔にならないように極力小さな声で言って、最小限の音で扉を閉める。
少なくとも自分ではかなり意識したつもりだったのだが、ここまで気を遣ってもには聞こえていたらしい。

! どこ行ってたの!」
「どこって・・・普通に学校」
「いやそうじゃなくて!」

素晴らしいほどの速さで否定された。
これ以外に答えようがないと思うのだけど。


「そーじゃなくて、、あんた今日授業1時間たりとも出なかったでしょ!」

どうやら、さっきの質問の『どこ』は、「学校」の『どこ』と言うことらしかった。



「・・・・そういえば・・・」
「もー、そういえばじゃないよ・・・」


聞けばは、寮を一緒に出たはずなのに朝以来を見かけないことを、大層心配したらしい。
1時間や2時間ならよくあることなのだが、それが午前いっぱい続いたのだから。



「屋上行っても居ないんだから! しかも三上と歩いてたし」
「へ?」
「え、あれだよね?」

特に否定も肯定もしていないのに、目の前の友人は勝手に混乱してくれていて面白い。
を見て笑っていると、彼女にキッと睨まれてしまった。


「・・・ちょっとサン。お話があります」

正座をして言うので、つられて正座で向き合う。
ああ、まだ制服着替えてないのに。

「正直に答えましょう。あなたは午前中どこに居ましたか」
「屋上」
「いなかったでしょ!」

何だかがちょっと怖い。


「・・・・男子棟の」
「・・・はい・・・・?」


・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・


しばしの沈黙。
その静寂を破ったのは、の絶叫。


「えええぇぇーっ!?」
「ちょ、うるさい」

でも、この学園ではそれが至極当然の反応だろう。
立入禁止の屋上、授業中、女子禁制の男子棟。3つも一度に規則を破っているのだ。


「最初から説明プリーズ」

妙な発音でが聞いてくる。
ここまでわかっているなら、仕方がない。

「普通に屋上に行ったら、男子棟の方がずっと日当たりが良いことにこの前気付きまして」
「ふむふむ」
「そこで、今日は 『よし、じゃあ向こうの方行こう!』 と思い立ったので、男子棟の方へ行ったのですよ」
「ちょっと、迷わなかったの!?」


どうやら、の中で私は迷うのが大前提のようだ。


「シツレイな。それで、ついでに生徒会の間違いプリント回収しようと、昼休みまで待つことにしました」
「・・・それで」
「そこで三上君と鉢合わせ!?」
「あー・・・・」
「で、笠井君の教室に案内してもらって、ついでにその後、女子棟の前の道まで連れてきてもらいました。おしまい」

聞いていたは相当呆れた様子だ。

「いくら生徒会室が向こう側にあるからって・・・いくら大義名分あるって言ったって・・・そこまでやるとは・・・」

大きくため息をつく。



「・・・反省しております」
「どこに消えたかと心配したんだからね」
ありがとー、愛してるっ!」
「はいはい、じゃあ数学教えてー」


明後日からテストが始まる。
明日は、中学最後の授業日となる。


最後くらいは真面目に受けよう。


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++あとがき++
1日サボりって・・・どうよ。
高校入ってもそれだと進級できませんよお嬢さん!
そんなの彼女はお構いなしなのかなぁ・・・。

お友達がやっと登場です。7話目にして初登場です。
遅いよ、私。

2006/05/21