必ず帰るという言葉を信じていた だから、それ以外は信じない。 暁 の 方 雨が酷く強かった。 大粒の水滴が、容赦なく体にたたきつける。 風も酷く強かった。 雨に喜んで協力し、傘も意味を成さない。 大嵐のせいで、海は荒れに荒れていた。 しかし、ここに港はない。 ・・・順調に行けば、明日の夕刻には港に入れたのに。 悔やんでもどうにもならないことはわかっていた。 こんな大して立派でもない船では、この嵐を乗り切れないであろうことも分かっていた。 無事に日本に帰ることは、叶わない。 この雨、この風。 伊達に船を見ているわけじゃない。 あがいても足掻いても、人は自然現象に打ち勝つ事は出来ないのだから。 ひとつ、頭上が明るくなった。 耳をつんざくような音がした。 彼女に何て、謝ろうか。 ・・・・帰れなくてごめん、ということ。 Top Next 2006/05/28 |