| 序章 |
外から、押し寄せる軍勢が見えた。 |
| 初話 |
見覚えのある青い飾り紐が目に入る。 |
| 次話 |
少女がゆっくりと口の中でその名前を呟く。 |
| 参話 |
ひとつは、ここから外へ出てはいけない、ということ。 |
| 肆話 |
彼女の真っ黒な髪に桜の花びらが一枚ついている。 |
| 伍話 |
今まで一度だってそう思ったことはなかったのに。 |
| 陸話 |
黒くそびえた木の引き戸は耳障りな音を立てて開いた。 |
| 漆話 |
・・・仰せのままに致します。 |
| 捌話 |
後ろで重い扉が閉まった音がした。 |
| 玖話 |
自分の立場、わきまえてくれる? |
| 拾話 |
はらりとかかった黒髪で顔が隠される。 |
| 拾壱話 |
時を待たずして消されるだろう。 |
| 拾弐話 |
まともに当たって勝てる確立はどう考えても低い。 |
| 拾参話 |
そして、一介の村娘はこんなものを着ていられない。 |
| 拾肆話 |
ほっとしたように、少女は微笑んでみせた。 |
| 拾伍話 |
今までの男たちが全てそうだったように。 |
| 拾陸話 |
南の空で最も高く、最も明るく満月が照らす深夜に。 |
| 拾漆話 |
凍り付くような笑みに、体が本当に動かない。 |
| 拾捌話 |
周囲から幾度となく響く刃と刃のぶつかる硬質な音。 |
| 拾玖話 |
少女は軽く会釈をするとぱたりと戸を閉めた。 |
| 廿話 |
籠の大きさからするにかなり小柄な少年だった。 |
| 廿壱話 |
少女が不安げな声でその名前を呼んだ。 |
| 廿弐話 |
用事はまだ半分も終わっていない。 |
| 廿参話 |
視覚も聴覚さえもいらないような気さえしてくる。 |
| 廿肆話 |
その赤い蝋燭は、もう半分も残っていない。 |
| 廿伍話 |
声を出すよりも先に、言葉を失くした。 |
| 廿陸話 |
情が出来たら、両方にとって不幸なことでしょう? |
| 廿漆話 |
桜色の行灯と黒い燭台が相変わらず鎮座していた。 |
| 廿捌話 |
毒娘の身分が自分で決められるとでも思ってるの? |
| 廿玖話 |
ほら、出なさい。 |
| 卅話 |
膝をつき、頭を下げて彼女は言った。 |
| 卅壱話 |
笑いたくなるほどの、皮肉。 |
| 卅弐話 |
その為だけに来たと言っても過言ではない。 |
| 卅参話 |
客をとった後のあそびめの姿。 |
| 卅肆話 |
承諾の返事が三方向からそれぞれ返ってくる。 |
| 卅伍話 |
それははたして、どれくらいの力が。 |
| 卅陸話 |
左手に、鳶色の羽織がひとつ。 |
| 卅漆話 |
反射的に手が出てきた方向を見上げる。 |
| 卅捌話 |
すべての目に見える動きが止まっている。 |
| 卅玖話 |
そんなもの、ずっと縁のなかったものだ。 |
| 肆拾話 |
昔一度だけ嗅いだ、あの匂いのような。 |
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